Amazon TAMとは?Header Biddingに欠かせないS2S(Server-to-Server)ソリューション
Transparent Ad Marketplace(TAM)は、Amazonが提供するHeader Biddingのソリューションです。TAMは、従来のウォーターフォール型の広告配信ではなく、複数のBidder(SSP/DSP)とリアルタイムで競争を行う仕組みを採用しています。
従来のウォーターフォール方式では、優先順位の高い広告枠から順に広告が配信されるため、最適な価格での取引が実現しにくいという課題がありました。一方、Header Biddingは、複数のBidderを同時に入札することで、より収益性の高い広告取引を可能にします。Amazon TAMは、このHeader Biddingの技術を活用し、Amazonの広告エコシステムと連携した広告取引を実現します。
TAMはPrebid.jsと異なり、サーバー間(S2S:Server-to-Server)でBidderと接続している点が大きな特徴です。Prebid.jsはブラウザ上(クライアントサイド)で各Bidderと通信するのに対し、TAMはAmazonのサーバー側で入札リクエストを処理し、BidderサーバーとのRTB連携を行います。通信処理が高速で安定するため、広告配信の遅延を軽減し、より高効率な取引が可能になります。

TAMはPrebid.jsと併用することも可能であり、クライアントサイドのHeader BiddingとサーバーサイドのTAMを組み合わせ、よりオークションプレッシャーを高める広告配信が可能です。
Amazon TAM・UAMとは?
Amazonが提供する広告取引の仕組みには、TAM(Transparent Ad Marketplace)とUAM(Unified Ad Marketplace)の2つがありますが、基本的なシステムはどちらも同じです。異なるのは契約形態であり、TAMはメディアがAmazonおよびBidderと直接契約する方式で、UAMはAmazonがBidderとの契約を管理する代理モデルを採用しています。UAMでは、メディアの運用代行事業者やトレーディングデスクを通じた導入が可能なケースもあります。
TAM(Transparent Ad Marketplace)について
TAMは、メディアがAmazonおよびBidderと直接契約を結び、Header Biddingを活用して広告収益を最大化する仕組みです。TAMでは、AmazonデマンドがBidderの一つとして機能し、Amazon Adsをはじめとする複数のBidderとリアルタイムで入札を行います。
- Amazonのサーバーを経由して入札が行われるため、クライアントサイドの負荷を軽減し、広告配信の遅延を最小限に抑えられます。
- TAMはAmazonのデマンドだけでなく、他のBidderとも並列で入札を行うため、最も高単価な広告を優先的に配信できます。
- TAMはPrebid.jsと組み合わせて運用することもでき、クライアントサイドとサーバーサイドのHeader Biddingを柔軟に統合できます。
- TAMはサーバーサイドで動作するため、Webだけでなくアプリ(APP)にも対応しており、アプリ内広告の収益化にも活用できます。
UAM(Unified Ad Marketplace)について
UAMは、TAMと同じシステムを使用しつつ、メディアがBidder各社と直接契約する必要がなく、Amazonが広告取引を一括管理するモデルです。メディアの負担を軽減しつつ、Amazonの広告需要を最大限に活用できるのが特徴です。
- メディアが複数のBidderと個別に契約する必要がなく、Amazon社と主要Bidderの契約があるため、それらのBidderを利用可能になります。
- Amazon Bidderと各Bidderからのすべての収益を組み合わせまとめて支払いがされます(この際、一定の手数料が差し引かれます)。
TAM・UAMの違い
項目 | TAM(Transparent Ad Marketplace) | UAM(Unified Ad Marketplace) |
---|---|---|
Amazon社との契約形態 | メディアとAmazonが直接契約 | メディアとAmazon、またはUAM取扱事業者と契約 |
Bidderとの契約形態 | メディアとBidder各社と直接契約 | AmazonとBidderの契約を利用 |
運用工数 | 高い | 低い |
収益最適化 | メディアが独自に設定可能 | Amazon、またはUAM取扱事業者が最適化を実施 |
支払い | 各Bidderがメディアに直接支払い | AmazonまたはUAM取扱事業者が収益を取りまとめ、手数料を控除したうえで支払い |
TAMは、より高度な運用を求めるメディア向けのソリューションで、UAMは手間をかけずに収益を最大化したいメディア向けのサービスと言えます。
TAMの入札から広告配信までのプロセス
Amazon TAMは、広告リクエストをAmazonのサーバーを介して処理し、リアルタイムで複数のBidderからの入札を競争させる仕組みです。

1.ユーザーがWebサイトやアプリを閲覧
Webページやアプリにアクセスすると、ページ内に埋め込まれたTAMのJavaScriptタグが実行されます。
2.Amazonのサーバーへ広告リクエストを送信
タグの実行により、Amazonのサーバーに広告リクエストが送られます。このリクエストには、広告枠の情報やユーザーのコンテキストが含まれます。
3.入札リクエストの送信と入札の実施
Amazonのサーバーが複数のBidder(Amazon Bidderを含む)に対して入札リクエストを送信し、それぞれのBidderがリアルタイムで入札を行います。
4.オークションの実施
Amazonのサーバー上でオークションが実施され、最も高い価格を提示した広告が選ばれます。ただし、あらかじめ設定されたブロックリストに該当する案件は除外されます。
5.広告サーバーへの情報送信
選ばれた広告の情報(単価・クリエイティブなど)が、GAM(Google Ad Manager)などの広告サーバーへ送信されます。
6.最終オークションと配信
広告サーバー側で、TAM、Prebid.js、Google AdXなどの入札結果をもとに最終オークションが行われ、最も高単価の広告が配信されます。
このように、TAMでは入札からオークションまでの処理がAmazonのサーバー上で行われるため、ブラウザ側での処理負荷が少なく、ページ表示速度への影響も抑えられます。さらに、Bidderの追加や設定変更もサーバー側で行えるため、Webサイトのコードを頻繁に更新する必要がない点も大きな利点です。
他のHeader Biddingとの併用
TAMは、Prebid.jsなどのクライアントサイドHeader Biddingソリューションと併用することが可能です。これにより、サーバーサイドのAmazon TAMとクライアントサイドのPrebid.jsを組み合わせ、より多くのBidderによる同時入札を実現し、オークションプレッシャーを高めることができます。
両者を併用することで、広告インプレッションごとに最も高単価の入札が選ばれる可能性が高まり、結果として収益性の向上が期待できます。既存のPrebid.jsの実装資産を活かしつつ、Amazonの高単価なデマンドを追加できる点も大きなメリットです。
導入方法と導入検討時のヒント
導入の流れ
- Amazonとの契約
- TAMを導入するには、AmazonおよびBidderとの直接契約が必要です。UAMの場合は、Amazonが管理する形で契約するため、手続きが簡素化されます。
- 申込み・問い合わせURL:https://aps.amazon.com/aps/contact-us/
- 技術的な統合
- WebページにTAMのJSコードを実装します。
- Prebid.jsが既存である場合は、Amazon TAMを組み込み、Prebid.jsのHeader Biddingと連携します。
- TAMはGAM(Google Ad Manager)のラインアイテムを自動生成するAPIが用意されているので実行し、GAMに入札結果を反映させる仕組みを整えます。
- TAMの場合は、利用したいBidderと契約を行いAmazon側とBidder間の設定を行います。UAMの場合は、このフローは簡略化されます。
- 配信Bidderのads.txtをサイトに実装します。
- 広告配信の開始
- 上記設定が完了したら、入札が開始されます。
導入検討時のヒント
TAMやUAMの導入にあたっては、いくつかの点に留意が必要です。まず、いずれもAmazonが定める最低要件(トラフィック量や技術要件)を満たしている必要があります。
契約形態による違いも重要です。TAMは自由度が高く、細かい収益設定やBidderの個別管理が可能である一方、導入や運用には一定の技術的な負荷が伴います。Prebid.jsやGAMとの連携など、社内開発リソースや外部サポートの準備が求められるでしょう。
一方、UAMでは、AmazonやUAM取扱事業者がBidderとの契約管理や技術統合を代行するため、導入ハードルは比較的低く、Prebid.jsとの連携を含めた一括サポートを受けられるケースもあります。
なお、このようなサポートを受ける場合には、収益から一定の手数料が差し引かれる点も考慮する必要があります。
TAMとUAMの違いを正しく理解し、自社の体制や目的に合ったモデルを選ぶことで、より効率的かつ効果的な広告運用が可能になります。

まとめ
Amazon TAMは、収益の最大化と運用効率の向上を実現するHeader Biddingソリューションです。サーバーサイドでの入札処理により、ブラウザの負荷を軽減しながら高単価な広告案件を獲得できます。また、Amazonの広告ネットワークとも連携しますので、TAMを通じて、Amazonデマンドとの取引も可能にします。
さらに、技術的な導入のハードルはありますが、Prebid.jsとの併用により、クライアントサイドとサーバーサイドのHeader Biddingを組み合わせた柔軟な広告戦略を構築でき、透明性の高い環境で収益の最大化を実現できるでしょう。
今後の広告収益の最適化を考える上で、Amazon TAMの導入を検討する価値は十分にあるでしょう。