Prebid.jsを強化するモジュール活用法。主要機能・導入方法・収益改善のポイント
Prebid.jsとは?

デジタル広告の世界では、収益を最大化するための技術や最適化手法が日々進化しています。その中でも、Header Biddingの代表的なソリューションであるPrebid.jsは、多くのメディアが活用する重要な技術です。
Prebid.jsは、広告収益を最適化するためのオープンソースのHeader Biddingソリューションです。
JavaScriptベースで、サイトのヘッダー部分にスクリプトを埋め込むことで動作し、複数のSSPやDSPとリアルタイムで入札を実施し、最高価格の広告を選択します。Google AdXやAmazon TAMとも競争可能で、収益の最大化が期待できます。
Prebid.jsの導入には、オークション競争を強化しCPMを向上させるメリットがあり、Google AdX、Google Open Bidding(OB)やAmazon TAMと公平に競争ができること、レイテンシーを抑えてユーザー体験を向上させる利点もあります。
Prebid.jsに関しては、 [Header Biddingソリューション「Prebid.js」とは?導入方法やメリットを詳しく解説] をご覧ください。
Prebidモジュールとは?Prebidの構造の説明
Prebid.jsは、多くのモジュールを組み合わせることで機能を拡張し、メディアのニーズに合わせた最適な環境を構築できる仕組みになっています。
これにより、入札、ターゲティング、データ解析、プライバシー管理、レポーティングなどの機能を柔軟に追加・カスタマイズできます。
Prebid.jsは、コア機能を提供するデフォルトモジュールと、用途に応じて追加できるカスタムモジュールの2つの要素で構成されています。

Prebid.jsライブラリの構成
Prebid.jsは「Core(基盤部分)」、「Adapters(接続するBidder/SSPごとのアダプター)」、「Modules(追加機能)」の3つの要素で構成されています。
デフォルトで含まれるCoreモジュール
Prebid.jsを公式オンラインビルドからダウンロードすると、基本的な動作に必要なモジュールが含まれています。
- 入札リクエストの送信(Bidder/SSPに対して入札を要求)
- Bidderからの入札結果の処理(各Bidderの応答を解析)
- 広告サーバーへの送信(入札結果を広告サーバーへ渡す)
- 入札ログの記録(入札状況を記録し、分析やデバッグに活用)
個別に追加が可能なモジュール
Prebid.jsでは、標準機能に加えて、さまざまなモジュールを追加することで機能を拡張できます。
メディアのニーズに応じて、入札ロジックの調整、ターゲティング強化、データ管理、プライバシー対応などのカスタマイズが可能です。
以下は、追加可能なモジュールの一例です。これらを適切に活用することで、広告配信の最適化や収益の向上を図ることができます。
- User ID Module(ID5、Unified ID、UID2、IntentIQ などの識別機能)
- Price Floors Module(最低入札価格の設定と管理)
- Currency Module(異なる通貨対応)
主なPrebidモジュール一覧とその機能
Prebid.jsには、広告のパフォーマンスを向上させるためのさまざまなモジュールが用意されており、各メディアのニーズに合わせて、適切なモジュールを選択できます。
ここでは、代表的なモジュールを紹介します。
Prebidデフォルト推奨モジュール
Prebid.orgでは、以下のモジュールの利用を推奨しています。
Consent Management – GPP
Global Privacy Platform (GPP) に準拠したプライバシー管理モジュールです。CMP(Consent Management Platform)と連携し、ユーザーの同意情報をBidderへ適切に送信します。
日本でも徐々にCMPを導入するWebサイトが増えてきております。インターネット上でのプライバシーが課題となっておりますので、今後CMP対応するメディアも増加する可能性が高いと考えられます。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/consentManagementGpp.html
Consent Management – TCF
GDPR(一般データ保護規則)およびePrivacy指令に対応したユーザー同意管理モジュールです。IABのTransparency & Consent Framework(TCF)に準拠しています。海外(EU圏)にユーザーをかかえるメディアは必須になってきます。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/consentManagementTcf.html
GPP Control – USNat
米国全体のプライバシー法(例: CCPA)に対応するため、GPPのセクション7(US National Privacy Framework)を適用するモジュールです。海外(US圏)にユーザーをかかえるメディアは必須になってきます。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/gppControl_usnat.html
GPP Control – US States
カリフォルニア州(CCPA)、コロラド州、バージニア州など、各州のプライバシー法(US State Privacy Laws)に準拠した設定を適用するモジュールです。こちらもUSNat同様に海外(US圏)にユーザーをかかえるメディアは必須になってきます。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/gppControl_usstates.html
GPT Pre-Auction
Google Ad Managerとの連携を強化し、Prebid.jsのオークション実施前にGoogleのグローバルプレースメントID(GPID)を設定するモジュールです。このGPIDがない場合は入札を行わないDSPもありますので、必ず実装をしましょう。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/gpt-pre-auction.html
TCF Control
TCFフレームワークの制御を提供し、GDPR準拠のデータ処理を行うための設定を可能にするモジュールです。こちらも、海外(EU圏)にユーザーをかかえるメディアは必須なモジュールであり、Bidderの動作を TCFに基づいて制限・制御する機能を有するため、Consent Management と共に利用されます。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/tcfControl.html
入札・オークション関連モジュール
Prebid.jsのオークションに直接関与し、広告の適切な選定と収益最大化を支援するモジュールです。
Bidder Adapter
Bidder Adapterは、各Bidder(SSPやDSP)が提供するアダプターであり、Prebid.jsからの入札リクエストを受け取り、入札を行う役割を持ちます。BidderのAdapterを設定しなければ、Bidderはリクエストを受け取る事ができず、オークションに参加できません。そのため、Prebid.jsを活用する際は、必要なBidderのAdapterを適切に設定することが不可欠です。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/bidders.html
Price Floors Module
各広告枠における最低入札価格(フロアプライス)を設定し、収益性の低い広告が配信されないように制御します。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/floors.html
ユーザー識別・ターゲティング関連モジュール
User ID Module
User ID Module は、複数の識別子を統合し、入札リクエストに含めることで、広告ターゲティングの精度を向上させるモジュールです。Cookieレス環境への対応が進む中、ID5、IM-UID、Unified ID 2.0、RampID など主要な識別子のほとんどがサポートされており、各Bidderの対応状況に応じて活用できます。
ファーストパーティデータと組み合わせることで、ターゲティングの精度向上や収益最大化が可能です。導入時には、BidderがどのIDをサポートしているかを事前に確認し、適切な設定を行うことが重要です。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/#user-id-modules
Supply Chain Object Module
IABのSupplyChainObject仕様に準拠し、広告枠の販売経路を明確にすることで、透明性を向上させます。SupplyChainObjectがないと入札を行わないデマンドもありますので、適切な設定を行いましょう。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/schain.html
First Party Data Module
First Party Dataは、Cookieレス環境において広告ターゲティングの精度向上に重要なデータです。Prebid.jsでは、メディアが保持するユーザー属性やページ情報をortb2フィールドで、Bidderに提供ができます。これにより、セグメント情報を活用した最適な広告配信が可能になります。特に IABのSegments and Taxonomy を用いることで、Bidderが適切な買い付けを行いやすくなります。導入前に、対応しているBidderを確認することが重要です。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/features/firstPartyData.html
IAB Audience Taxonomy:https://github.com/InteractiveAdvertisingBureau/Taxonomies/tree/main/Audience%20Taxonomies
IAB Contents Taxonomy:https://github.com/InteractiveAdvertisingBureau/Taxonomies/tree/main/Content%20Taxonomies
その他のサポートモジュール
入札の効率化や広告配信のパフォーマンス向上を支援するモジュール。
Currency Module
異なる通貨(USD、EUR、JPYなど)をリアルタイムで換算し、グローバルな広告取引をスムーズに行うことが可能です。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/currency.html
Video Module
VAST/VPAID対応のインストリーム動画広告やアウトストリーム広告をPrebid.jsで取り扱えるようにします。動画広告を活用する場合、Bidderの対応状況を確認しましょう。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/prebid-video/video-module.html
Analytics Module
Analytics Adapters は、入札データの分析や収益の最適化を支援するモジュールです。各BidderやIDプロバイダーが、入札精度を向上させ、最適な広告配信を実現するために提供しています。
BidderやIDプロバイダーごとに異なる独自の分析機能を持つため、対応状況を確認のうえ、利用可能な場合は導入を推奨します。
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/overview/analytics.html
モジュールの導入方法
Prebid.jsのビルド
Prebid.js公式サイトのオンラインビルドを利用することで、必要なモジュールを選択し、カスタマイズしたPrebid.jsをダウンロードできます。
また、Node.js環境でPrebid.jsをローカルにビルドし、自由にカスタマイズする方法です。
頻繁に変更がある場合や、自動化が必要な環境ではローカルビルドが便利です。
pbjs.setConfigでの設定
モジュールを導入したら、適切に設定を行う必要があります。
以下は主要なモジュールのpbjs.setConfigの設定例です。
フロアプライス(Price Floors Module)の設定例
Prebid.jsのPrice Floors Moduleを活用することで、Google Ad Manager(GAM)に渡される前の段階で、適切なフロアプライスを設定し、低価格の入札をフィルタリングできます。

設定のポイント
- enabled: true – Price Floors Module を有効化
- currency – 設定する通貨(USD, EUR, JPY など)を指定
- floor – 最低入札価格(CPM単位)を設定し、低単価の入札を制限
- GAMのUnified Pricing Rules(UPR)と競合しないよう注意
公式ドキュメント:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/floors.html#defining-floors
ユーザー識別(User ID Module)の設定例
User ID Moduleを利用すると、さまざまなIDソリューションをPrebid.jsで統合し、ユーザー識別の精度を向上させることができます。

設定のポイント
- name の指定 – 使用するIDプロバイダーを指定(例: ID5、Unified ID、IntentIQ、UID2 など)。
- params の設定 – 各IDベンダーごとに異なるパラメータが必要なため、詳細は公式ドキュメントやベンダーに確認することが推奨されます。
- 一部のIDプロバイダーは、利用に際して契約や事前の設定が必要な場合があるため、導入前に確認が必要です。
各IDプロバイダーの対応状況や詳細な設定については、Prebid公式のUser ID Modulesドキュメントを参照してください。
Prebid.js公式ID一覧:https://docs.prebid.org/dev-docs/modules/userId.html#user-id-sub-modules
First Party Dataの設定例
First Party Data Moduleを利用すると、メディアが保有するユーザーデータやページ情報をBidderへ送信し、より高度なターゲティングが可能になります。例えば、IABのAudience Taxonomyを活用することで、業界標準のカテゴリに基づいたセグメント情報を提供できます。
以下の設定例では、ユーザーの興味・関心を示すセグメントデータを指定し、Bidderが適切な広告配信を行えるようにしています。

設定のポイント
- segtax: 4 – IABのAudience Taxonomyに準拠したデータ分類を示します。
- segment: [{ id: “1” }] – 特定の興味・関心カテゴリに分類されたユーザーを識別するセグメントIDを設定します。
IAB Audience Taxonomy:https://github.com/InteractiveAdvertisingBureau/Taxonomies/tree/main/Audience%20Taxonomies
IAB Contents Taxonomy:https://github.com/InteractiveAdvertisingBureau/Taxonomies/tree/main/Content%20Taxonomies
収益最大化のためのモジュール選定とまとめ

収益を最大化するためには、Bidderごとの対応機能を確認し、適切なモジュールを導入することが重要です。プライバシー対応(GPP/TCF)、ユーザー識別(User ID Module)、オークション最適化(Price Floors)、パフォーマンス分析(Analytics Module) などのモジュールを活用し、収益性を高めましょう。導入時には、Bidderのサポート状況や環境の変化を考慮し、最適なカスタマイズを行うことがポイントです。