RTBオークションの基本!ファーストプライスとセカンドプライスの違いやPMP取引を詳しく解説
RTBの基本概念

オンライン広告の世界では、RTB(Real Time Bidding:リアルタイム入札)が広告の取引を大きく変えました。これは、広告枠が表示されるたびに、瞬時にオークションが行われ、最も高い入札額を提示した広告が配信される仕組みです。
RTBは、広告主と媒体社をつなぐプログラマティック広告の中核を担っており、広告の配信をより効率的かつ柔軟に行うことができます。この仕組みを支えるのがDSP(Demand-Side Platform)とSSP(Supply-Side Platform)です。DSPは広告主のためのプラットフォームで、適切なターゲットに向けて自動で入札を行います。一方、SSPは媒体側が広告枠を管理し、最適な価格で広告を販売する役割を果たします。
このDSPとSSPが連携することで、広告主は効果的な広告運用ができ、媒体社(メディア)は収益の最大化を図ることができます。
DSP/SSPの仕組みは「プログラマティック広告の仕組みとDSP・SSPの流れ」の記事をご覧ください。
RTBの仕組みを図解で解説

RTBの流れを説明すると、次のようになります。
- ユーザーがWEBメディアを訪問
- ユーザーがサイトを訪れると、ページ内の広告枠からSSPが呼び出されます。
- SSPが広告枠の情報をDSPに送信
- SSPは、広告枠の詳細情報(サイトの種類、広告枠のサイズ、ユーザーの属性など)を、接続しているDSPに一括送信し、DSPからの入札を待ちます。
- DSPがターゲットに合う広告を選び、入札を行う
- DSPは広告主のキャンペーンの条件に基づき、その広告枠に適した案件を選定し、入札価格を決定します。
- 例えば、特定の商品を過去に閲覧したユーザーであることがわかった場合は、高めの入札をするなどし、入札単価を各DSPのロジックに基づいて決定します。
- 最も高い入札額を提示した広告が配信される
- SSPがすべてのDSPからの入札を比較し、最も高額な広告を選びます。
- WEBメディアが事前に出したくない広告をSSPに登録している場合は、配信案件が考慮されます。
- 選ばれた広告は、ページの広告枠に表示されます。
この一連のプロセスはわずか数100ミリ秒(1秒=1000ミリ秒)以内に完了し、ユーザーのページ閲覧を妨げることなく行われます。
※1000ミリ秒=1秒
RTBオークションの仕組みと価格決定方式
RTBでは、広告枠ごとにオークションが行われ、最も高い入札額を提示した広告主の広告が掲載されます。そのオークション方式には、主にセカンドプライスオークションとファーストプライスオークションの2種類があります。
セカンドプライスオークションとは?

従来、RTBではセカンドプライスオークション(Second-Price Auction)が主流でした。この方式では、最高入札額を提示した広告主が、2番目に高い入札額、もしくはフロアプライス+1円(ドルの場合は+0.01ドル)を支払う仕組みです。RTB市場がまだ初期の頃は、適正価格が自然に形成されやすい点や、オークションの信頼性が向上する目的を持ってセカンドプライスオークションが積極的に採用されておりました。
セカンドプライスオークションのメリット
- コストの最適化:広告主は、入札額そのままを支払う必要がなく、より適正な価格で広告枠を獲得できる。
- 積極的な入札がしやすい:実際に支払う金額が調整されるため、高めの入札を設定しやすく、より良い広告枠を狙う戦略がとりやすい。
- 価格競争が激化しにくい:競争があっても、過剰な支払いを避けられる仕組みの為、極端な価格高騰を防ぎ、市場全体の価格を安定させる効果がある。
セカンドプライスオークションのデメリット
- 透明性の問題:実際に支払う価格が入札額と異なるため、広告枠の価値が適正に評価されにくい。
- SSP側の調整:一部悪意のあるSSPがフロアプライスや2番目に高い入札額を調整することで、落札価格の高騰といった、市場の公平性を損なう恐れがある。
ファーストプライスオークションとは?

近年ではファーストプライスオークション(First-Price Auction)への移行が進んでいます。この方式では、とてもシンプルで、最高入札額を提示した広告主が、そのままの金額を支払います。
ファーストプライスオークションのメリット
- 価格の透明性が高い:広告主が提示した入札額がそのまま適用されるため、支払額が分かりやすく、予算管理がしやすい。
- 市場の公平性が向上:セカンドプライスオークションで問題視されていた価格の不透明な調整がなくなり、純粋な競争が行われる。
- 収益の最適化がしやすい:媒体側は明確な入札価格で広告枠を販売できるため、価格戦略を立てやすく、最大収益を狙いやすい。
ファーストプライスオークションのデメリット
- 広告主にとってコストが高くなる可能性:最終的に入札額がそのまま支払額になるため、入札額の設定ミスが直接コスト増につながる。
- 慎重な入札戦略が必要:価格を高く設定しすぎると予算消費が早くなり、逆に低く設定しすぎると広告枠を獲得できないリスクがある。
セカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへの移行
多くの広告取引市場では、透明性を高めるためにファーストプライスオークションへの移行が進んでいます。例えばGoogleは2019年にGoogle Ad Exchangeでセカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへの移行を開始し、2021年にはGoogle AdSenseでもこの変更を完了しています。
技術の進歩により、DSP側も広告主が適切な価格で入札できる仕組みが整い、過去に懸念されていた課題も入札ロジックの強化によって解決されつつあります。AIや機械学習を活用した最適化技術により、広告主は市場の状況に応じた適切な入札額を自動で計算し、より精度の高い入札戦略を取ることが可能になっています。
優先取引(PMP)とは?
RTBの中でも、優先取引という取引形態があります。PMP(Private Market Place)とも呼ばれ、広告主が特定の広告枠に対して事前に価格を設定し、優先的に購入できる取引方式です。これにより、広告主は希望の枠を確保しやすくなります。
優先取引とオープンオークションの違い
優先取引にはいくつかの種類があり、それぞれ取引の仕組みや目的が異なります。大きく分けると、事前契約で広告枠を確保する方式と、限られた広告主のみに提供されるオークション方式があります。これにより、広告主はターゲットに合った広告枠を確保しやすく、媒体社も安定した収益を確保することができます。
優先取引には、3種類の取引形態があります。
- PG(Programmatic Guaranteed):事前に契約した固定価格と在庫を保証し、広告主が確実に広告枠を購入できる方式。
- PD(Preferred Deal):事前に契約した固定価格で広告枠を購入できるが、在庫の保証はない方式。
- PA(Private Auction):限られた広告主のみに参加が許可されるオークション形式。
以下の表は、優先取引の種類ごとの特徴を比較したものです。
取引方式 | 取引方法 | 単価 | 保証形態 | 参加条件 |
---|---|---|---|---|
PG(Programmatic Guaranteed) | 事前に配信内容を決定 | 固定価格 | 在庫・単価ともに保証 | 限定された広告主のみ |
PD(Preferred Deal) | 事前に配信内容を決定 | 固定価格 | 在庫は保証なし | 限定された広告主のみ |
PA(Private Auction) | 限定オークション形式 | 変動(オークション) | 在庫保証なし | 限定された広告主のみ |
Open Auction | 一般オークション | 変動(オークション) | 在庫保証なし | 誰でも参加可能 |

優先取引の活用について
近年、オープンオークション(Open Auction)だけでなく、優先取引の利用が増加しています。その背景には、広告主と媒体社の双方が求める透明性の向上やブランドセーフティの確保、ターゲティング精度の向上といったニーズがあります。
優先取引には、目的に応じてさまざまな種類があり、広告主は戦略に合わせて適切な取引形態を選択することが重要です。例えば、確実に広告枠を確保したい場合はPG、柔軟な条件で優先的に取引したい場合はPD、特定の広告主のみの競争環境を希望する場合はPAが適しています。
また、優先取引を活用することで、広告主はRTBでどこに広告を配信するかをコントロールしやすくなります。特定の媒体やユーザー層に絞って広告を配信したい場合、優先取引を通じてターゲティングを精密に設定できます。
さらに、高い入札額を支払ってでも、特定の条件下で優先的に広告枠を購入したい広告主にとって、優先取引は非常に有効な手段です。例えば、競争が激しい業界や、高いROI(投資対効果)が見込める広告キャンペーンでは、PGやPDを活用することで、確実に広告を配信しつつ、競争を避けることができます。
まとめ

RTBの基本概念、ファーストプライスオークションとセカンドプライスオークションの違い、そして優先取引などの取引手法について解説しました。広告市場では、透明性と収益最適化を目指し、取引方式の進化が続いています。
変化の激しい広告市場において、常に最新の情報をキャッチアップし、最適な取引手法を選択していくことが、媒体社(メディア)の皆様が広告収益を最大化するための鍵となります。