プログラマティック広告を理解する!DSPとSSPの仕組みと広告が届くまでの流れを図解
デジタル広告の取引手法は大きく進化しており、その中心的な役割を担っているのが「プログラマティック広告」と呼ばれる仕組みです。これは、広告枠の買付けから配信までを、人の手を介さず自動で行う取引方式のことです。
プログラマティック広告が登場する以前は、媒体社(メディア)と広告主が直接交渉を行い、掲載する広告の種類、期間、表示回数、そして価格などを個別に決定する、手間と時間を要する純広告と呼ばれる直接取引が一般的でした。この手法は、双方にとって多くのコミュニケーションコストを必要とし、広告効果の最大化という点においても課題がありました。
プログラマティック広告の登場により、広告主が設定した目的や条件に合致する可能性の高いユーザーに対して、リアルタイムで最適な広告がより効率的に配信されるようになり、現在では主要な広告取引の手法の一つとなっています。現在もデジタル広告の直接取引は行われており重要な取引形態ですが、プログラマティック広告が非常に大きな割合を占めており、より効率的で効果的な広告運用を実現する主要な手法となっています。
プログラマティック広告の中でも、IAB(Interactive Advertising Bureau)が定義する「RTB(Real-Time Bidding)」が、広告枠のインプレッションが発生するたびにリアルタイムで入札と配信が行われる仕組みとして広く利用されています。

上記の図は、RTB(Real Time Bidding:リアルタイム入札)の基本的な流れを示しています。広告主はDSP(Demand-Side Platform)を通じて広告の配信設定を行い、ユーザーがメディアを閲覧する際に発生した広告リクエストがSSP(Supply-Side Platform)を経由してDSPに送られます。DSPは受け取ったリクエストに基づき入札を行い、落札した広告がSSPを通じてユーザーに配信されるという仕組みです。
DSP(Demand-Side Platform)とは?
DSPは、単なる広告出稿の管理ツールではなく、莫大なデータをもとに、瞬時に最適な広告を選び出す“判断エンジン”としての役割を担う、広告主側のプラットフォームです。
SSPから広告リクエストが届いた瞬間、DSPはユーザーのCookie、ID、閲覧履歴、購入傾向、サイトの文脈などあらゆる情報をもとに、膨大なキャンペーン案件の中から、そのユーザーに最も適したキャンペーンを選定します。そして、過去の成果データ、コンバージョン率、予算状況などを総合的に判断し、最適な入札価格をリアルタイムで決定します。実際に配信される広告クリエイティブも選びます。
DSPの仕組みと主要な機能
DSPは次のような機能を主に備えており、広告効果の最大化を支えています。
- オーディエンスターゲティング:年齢・性別・興味関心などをもとにユーザーを絞り込み、より精度の高い配信を可能にします。
- 配信先の選定:広告の表示先となる媒体のジャンルや、デバイス、地域などを指定可能です。
- 入札価格の自動調整(ビッディングアルゴリズム):過去のパフォーマンスや目標CPAなどをもとに、最適な入札価格をリアルタイムで計算します。
- コンバージョン計測やレポート機能:配信結果を可視化し、改善点の把握や次回施策への反映が可能です。
- サードパーティツールとの連携:外部のアドベリフィケーション、アトリビューション計測ツールとの接続によって透明性や信頼性を確保します。
- DMPやCDPとの連携:より高度なセグメントデータを活用して配信精度を高めます。
- PMP(プライベートマーケットプレイス)対応:Open Auctionに加えて、選ばれた媒体枠に限定して入札することも可能です。
広告主は、DSPを通じて膨大な広告枠の中から、費用対効果の高いユーザーに広告を届けることができます。
SSP(Supply-Side Platform)とは?
SSPは、メディアやアプリ運営者が保有する広告枠を効果的に活用し、収益を最大化するためのプラットフォームです。広告枠の価値を最大限に引き出すことを目的とし、DSPやアドエクスチェンジと連携しながら、広告在庫の提供、価格設定、配信制御などをリアルタイムで行っています。
DSPが広告主側のニーズに応えるプラットフォームであるのに対し、SSPは媒体社(メディア)側のニーズに応える存在と言えます。多数のDSPと接続することで、より多くの広告主からの入札機会を増やし、競争原理を高めることで広告単価の向上を目指します。また、広告の品質管理やブランドセーフティ対策、最低落札価格(フロアプライス)の設定など、媒体社(メディア)のブランド価値を守るための機能も備わっています。
SSPの仕組みと主要な機能
SSPは次のような多様な機能を備えており、媒体社(メディア)側の収益最大化と広告品質の維持を支えています。
- インベントリ管理:メディア内にある広告枠(位置、サイズ、形式など)を管理し、配信在庫の可視化と最適化を行います。
- 広告リクエストの構築:ユーザー情報、広告枠情報、メディア情報、Deal情報などを統合し、DSPごとに最適化されたリクエストを生成します。
- オークション制御:PMP条件を優先的に評価し、Open Auctionと組み合わせて最終的な広告選定を行います。
- ブランドセーフティ&広告ブロック管理:NGカテゴリやドメイン、広告内容のチェックなど、掲載する広告に関するルールを事前に設定・フィルタリングを行います。
- フロアプライス管理:最低入札価格を広告枠単位で設定し、過度な価格下落を防止します。
- Viewabilityなどの実績活用:過去のパフォーマンス(Viewability、CTRなど)に応じた評価・フィルタリングを行い、より質の高い広告の買い付けを目指します。
- 複数DSP連携と高速処理:多数のDSPとのリアルタイム通信を処理し、効率的なオークションを実現します。
このようにSSPは、媒体の収益最大化を支えるとともに、広告主にとっても安全かつ質の高い配信環境を整える、広告流通の“司令塔”として機能しています。
またオークションの仕組みは、「RTBオークションの基本!ファーストプライスとセカンドプライスの違いやPMP取引を詳しく解説」をご覧ください。
DSPとSSPの連携と広告配信の流れ
ここでは、実際の広告配信の流れを図解を交えて段階的に説明していきます。
RTBと広告配信の流れ
この図は、ユーザーがメディアにアクセスした瞬間から、SSPを経由し、DSPによる広告入札を通じて広告が配信されるまでの全体的な流れを示したものです。
①ユーザーがメディアのページへアクセスします。
②広告枠に関する情報とユーザー情報がSSPに渡ります。
③SSPが、Aで設定されているブロックリスト・フロアプライス・Deal情報などを考慮しつつ、DSPへ入札リクエストを送信します。
④DSPは、Bで設定したキャンペーン情報・ユーザー属性・Cookie・DMP連携などをもとに、最適な入札価格と広告クリエイティブを判断します。
⑤DSPが入札レスポンス(単価・クリエイティブなど)を返却します。

⑥SSPがPMPやOpen Auctionなどの条件を評価し、オークションを開催し、最適な広告を選定します。そしてユーザーのブラウザに広告が配信されます。
この一連の処理は数百ミリ秒(1秒=1000ミリ秒)以内に完了し、ユーザーの閲覧体験を妨げることなくシームレスに広告が配信されます。
続いて、それぞれの仕組みをもう少し詳しく見ていきます。
SSPの広告リクエスト処理

ユーザーがWebページやアプリを閲覧すると、媒体社(メディア)側の広告タグやSDK、Header Biddingを経由して、SSPに広告リクエストが発生します。SSPはこのリクエストを構築する際に、以下のような複数の情報を統合して入札リクエストを生成します。
- 広告枠の情報(フォーマット、サイズ、掲載位置など)
- ユーザーの情報(Cookie、MAID、サードパーティIDなど)
- メディアに関する情報(ドメイン、ジャンル、カテゴリなど)
- フロアプライスやブロック条件、Viewabilityなどの実績情報
- 各DSPとの取決め情報(送付先や対応するDeal情報)
これらをもとに、DSPごとに最適化されたリクエストが生成され、瞬時に複数のDSPに送信されます。
DSPの入札処理

DSPはSSPからのリクエストを受信すると、DMPやCDPと連携してユーザーの閲覧・購買履歴、属性データを即時取得します。あわせて、過去の配信ログ、効果指標(CVR・CTRなど)、ブラックリストなどの情報をもとに、最適なキャンペーンの抽出と入札価格の算出を行います。
また、広告主側で設定されたターゲティングやフリークエンシー制御、予算消化状況なども考慮しながら、最適なクリエイティブを選び、入札レスポンスを返却します。
SSPの配信処理

SSPは、各DSPからの入札レスポンス(広告単価、クリエイティブ情報など)を受け取ると、まずPMPの条件を評価します。PG(プログラマティック・ギャランティード)は事前契約があるため即時に配信され、PD(プリファード・ディール)やPA(プライベート・オークション)は条件にマッチした場合、優先的に選定されます。
なお、PAをOpen Auctionと同じ優先度(並列)で扱う設定にしているケースもあり、その場合は両方のオークションに参加させた上で、もっとも高単価の広告が選ばれる仕組みになります。
PMPの条件に該当しない、あるいは該当するオークションで落札がなかった場合は、Open Auctionに進みます。ここではすべての入札の中から最適な広告が選定され、フロアプライスやブロック条件、デバイス制限、配信のタイムアウトなどの追加チェックを経て、最終的な広告が決定されます。
今後のDSP・SSPの進化とクッキーレス対応
プライバシー保護の強化やサードパーティCookieの廃止といった環境変化により、DSPとSSPの技術進化はさらに加速しています。
DSPは、ファーストパーティデータの活用を軸に、コンテキストターゲティングやポストCookie時代に対応したIDソリューションの導入を進めています。また、AIや機械学習を活用し、ユーザー単位で最適なクリエイティブや入札価格を判断するロジックの高度化も進行中です。
一方、SSPは、多様なIDソリューション(Unified ID、IntentIQなど)への対応や、ユーザーの同意管理を含めたプライバシー機能の強化に取り組んでいます。加えて、新たな広告フォーマットや、ファーストパーティIDと連携する機能の実装など、広告主との連携をより強化する方向に進化しています。
こうした変化により、クッキーレス環境下でも、プライバシーに配慮しながら効果的な広告配信が可能になると期待されています。
まとめ

プログラマティック広告は、広告主側のDSPと媒体社(メディア)側のSSPの連携によって成り立ち、その中心にはRTBの仕組みがあります。さらに、PMPによる優先取引も存在し、より柔軟な配信設計が可能です。
今後は、クッキーレス時代への適応が重要なテーマとなり、ファーストパーティデータの活用、高度なターゲティング技術、新しいIDソリューション、そしてAIによる配信最適化などが進化の鍵を握ります。
プログラマティック広告の仕組みとその変化を正しく理解することは、これからのデジタル広告戦略を立てるうえで欠かせない基盤となるでしょう。