広告収益を左右する「ビューアビリティ(Viewability)」の正しい理解と活用法
ビューアビリティ(Viewability)とは
ビューアビリティとは、広告がユーザーの画面上に実際に表示され、視認可能である割合を示す指標のことです。広告が配信されたとしても、ユーザーに見られなければ意味がありません。そのため、広告業界ではビューアビリティの確保が重要な指標として定着しています。
IAB(Interactive Advertising Bureau)の定義では、ディスプレイ広告であれば「ピクセルの50%以上が1秒以上表示されること」、動画広告では「ピクセルの50%以上が2秒以上表示されること」がビューアブルとされています。
また、ビューアビリティは以下の式で算出されます。
ビューアビリティ(%)=ビューアブルインプレッション数÷測定対象インプレッション数×100
例:ビューアブルインプレッションが7,500件、測定対象インプレッション数が10,000件の場合→ビューアビリティは75%
なぜビューアビリティ(Viewability)が重要なのか?
ビューアビリティの高さは、広告効果と一定の相関があるとされています。ユーザーに確実に視認される広告枠は、画面の注目度が高い位置にあることが多く、結果としてCTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)などの指標が改善されやすい傾向があります。
その結果、広告主はビューアブルインプレッションに対してより高いCPM(インプレッション単価)で入札する傾向にあり、ビューアビリティの高いメディアは結果として広告単価が上がる傾向にあります。
逆に、ビューアビリティが低い広告枠は、入札されにくくなり、広告在庫の消化が進まない原因にもなります。
ただし、ビューアビリティが高いだけで効果が上がるとは限らず、クリエイティブの内容やターゲティング精度との掛け合わせも重要な要素です。
ビューアビリティ(Viewability)の背景
ビューアビリティが注目されるようになった背景には、広告の品質に対する関心の高まりがあります。特に以下の3点が挙げられます。
- アドフラウド対策:ボットによる非人間的なインプレッションを除外する動きが進む中で、実際にユーザーに見られているかどうかの指標が求められるようになった。
- ブランドセーフティの意識向上:企業がブランド毀損を避けるため、広告が表示される文脈や品質にも敏感になっている。
- プログラマティック広告の進化:入札の高度化に伴い、広告主がビューアビリティやCTRなどの実績データをもとに媒体を選定するようになった。
ビューアビリティ(Viewability)が高い広告フォーマット
ビューアビリティの向上には、広告フォーマットの選定も重要な要素です。以下は、一般的にビューアビリティが高いとされる広告フォーマットです。
広告フォーマットの選定はメディアのコンテンツ構造やユーザー行動との相性も考慮しましょう。
オーバーレイ広告(アンカー広告/スティッキバナー)
ページの上下やサイドに固定表示されるバナー。スクロールしても常に画面内に表示されるため、ビューアビリティが非常に高い。

インリード広告
記事コンテンツの途中に自然に差し込まれる広告。読者の目線に沿って表示されるため、ユーザーに違和感なくリーチ可能。

インタースティシャル広告
ページ遷移時に全画面で表示される広告。表示時間が確保されるため、ビューアビリティは高いが、掲載頻度やUXへの配慮が重要。

スクロール連動型広告(スクローラブルアド)
ユーザーのスクロール操作と同期して動く広告。高いアテンションとビューアビリティを実現しやすい。

動画リワード広告
主にアプリ内で使われる形式だが、ユーザーが報酬と引き換えに自発的に視聴するため、完全視聴率・ビューアビリティともに高水準。

フォーマットごとの目安となるビューアビリティ(Viewability)
媒体によってばらつきはあるものの、以下は一般的にビューアビリティが「高い」とされる目安です。
広告フォーマット | 高いビューアビリティの目安 |
---|---|
オーバーレイ広告 | 80%以上 |
動画リワード広告 | 90%以上 |
インリード広告 | 70〜80% |
インタースティシャル広告 | 90%以上(※ブロック・離脱率に注意) |
スクロール連動型広告 | 70%以上 |
通常のディスプレイ広告(上部) | 60〜70% |
業界平均としては、媒体全体のビューアビリティが50%を超えていれば「悪くない」、60%以上で「良好」、70%以上で「優秀」と評価されることが多いです。これは1つの広告枠単体ではなく、媒体全体で配信された広告インプレッションに対するビューアブルインプレッションの割合を示す指標です。
ビューアビリティ(Viewability)を高める方法
メディアがビューアビリティを意識した広告枠設計を行うことは、収益性と媒体価値の両面で重要です。以下に具体的な施策を紹介します。
- ファーストビュー(Above the Fold)の活用:ページ読み込み時に表示される範囲に広告を配置することで、自然とビューアビリティが上がる。
- スクロール率や滞在時間に基づく配置:ユーザーがよく閲覧する位置に広告を設置することで、ビューアビリティを高める。
- Lazy Load+表示タイミング制御:広告をユーザーの画面に近づいたタイミングや入ったタイミングで読み込むことで、無駄なインプレッションを減らし、ビューアビリティを最適化する。
- 広告サイズとデザインの最適化:ページの自然な流れを邪魔せずビューアビリティを確保するためには、サイズや配置にも工夫が必要。
- オーバーレイ広告の活用:ユーザーのスクロールに追随する広告は、高いビューアビリティを確保しやすいが、UXとのバランスに注意。

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ビューアビリティ(Viewability)測定ツールと注意点
ビューアビリティの測定には、以下のような第三者ツールが広く使われています。
- Integral Ad Science(IAS)
- DoubleVerify
- Google Active View(Google Ad Manager経由)
ただし、ツールごとに測定方法や定義に若干の差異があるため、複数ツールでのクロスチェックや、指標の読み解き方に注意が必要です。また、ビューアビリティだけで広告効果が決まるわけではなく、クリエイティブやターゲティングとの掛け合わせも重要です。
ビューアビリティ(Viewability)の課題
ビューアビリティは重要な指標である一方、いくつかの課題も存在します。
- 指標としての過信:ビューアビリティが高くても、広告効果(CTRやCVR)が必ずしも高いとは限らない。
- UXとのトレードオフ:無理な追尾広告やスティッキー広告の多用はユーザー体験を損ね、サイト離脱を招くリスクがある。
- 広告ブロッカーの影響:広告ブロッカーにより、測定ツール自体が動作せず、ビューアブルインプレッションとしてカウントされないケースがある。
- ビューアビリティ対策の運用コスト:表示制御、Lazy Load、測定ツールの実装には開発リソースが必要。
- 「実際に見られていない」問題:技術的にはビューアブルと判定されても、ユーザーの視線が広告に向いていないケースがある。
このような背景から、近年では「ビューアビリティ」よりもさらに一歩進んだ指標として「アテンション(Attention)」が注目されています。アテンションは、ユーザーがどれだけ広告に集中したか(例:視線の滞留、動画の再生率や音声ON率など)を測定し、実際の広告効果とより相関が高いとされています。
ただし、アテンションは現時点では明確な業界標準が存在せず、ツールや事業者によって定義や測定方法が異なるのが実情です。そのため、アテンションは「これから注目される可能性のある指標」であり、実用的な活用や評価基準の整備はまだこれからといえる段階です。
今後、ビューアビリティとアテンションを組み合わせた複合的な広告効果指標が標準化されていくことが期待されています。
まとめ

ビューアビリティは、広告の価値を左右する重要な指標です。単に広告が配信されたという事実だけでなく、実際に視認可能な状態であったことを測ることで、広告主・媒体社双方にとっての信頼性と費用対効果を高めることができます。
ユーザー体験を損なわずにビューアビリティを高める工夫は、広告収益の向上だけでなく、広告主からの継続的な評価・出稿にもつながります。
媒体社にとっては、広告枠の設計やフォーマット選定、表示制御の工夫など、日々の改善がそのままメディア価値の向上に直結します。
今後もビューアビリティを意識した設計と運用を積み重ねることが、安定した収益と長期的な信頼の獲得につながるでしょう。